1997年からインターネット業界に携わり、2007年の創業以来、会員管理・継続課金システムの導入支援を続けてきました。ガラケー課金、スマートフォン、サブスクリプション、オンライン化、そして生成AI。振り返ると、この20年間で会員ビジネスを取り巻く環境は大きく変化しました。

しかし、本当に変わったのは技術だけではありません。会員サイトに求められる役割そのものが、大きく変わってきたのです。

かつては「会費を集められること」が価値でした。その後、会員との接点となり、継続課金を支える基盤となり、オンラインで価値を届ける場へと進化していきました。そして今、AIの登場によって、会員サイトは新しい価値を生み出す基盤へと変わろうとしています。

今回は、私自身が現場で見てきた会員ビジネスの「5つの転換点」を振り返りながら、時代ごとに求められてきた役割の変化を整理してみたいと思います。

01 第1の転換点

「課金できること」そのものが価値だった時代 2007〜2010

私が創業した2007年頃、会員ビジネスの中心には携帯電話向けの公式コンテンツ市場がありました。特にNTTドコモの「iモード公式サイト」は、多くのコンテンツ事業者にとって最大の目標でした。

ドコモが厳選した公式サイトだけが公式メニューに掲載され、有料コンテンツの月額料金は携帯電話料金とまとめて請求される「キャリア課金」の仕組みが整備されていました。ユーザーはクレジットカード情報を入力する必要がなく、数クリックで有料会員になれたのです。

私自身もドコモ公式サイトの認定を勝ち取るために、何日も徹夜しながら企画書を書き続けました。提出した企画書は500ページを優に超えていたと思います。今では考えられませんが、それほどまでに公式サイトになる価値が大きかったのです。

当時の会員サイトの役割は、現在のようなコミュニティ形成や顧客体験の提供ではありませんでした。まず重要だったのは、確実に会費を回収できること。そして継続課金の仕組みを持つことでした。

今振り返ると、「何を提供するか」よりも、「どうやって課金するか」の方が競争優位になりやすい時代だったと言えます。会員ビジネスにおいては、「課金できること」そのものが価値だったのです。

公式サイトの認定を勝ち取るため、徹夜で企画書を作成。提出した企画書は500ページを優に超えていた。今振り返ると『何を提供するか』よりも『どうやって課金するか』が競争優位になりやすい時代で、『課金できること』そのものが価値だった。
02 第2の転換点

スマートフォンが会員獲得の常識を変えた時代 2011〜2014

2011年頃から、スマートフォンが急速に普及し始めました。それまで主流だったガラケー向けサイトは次々とスマホ対応を迫られ、私のもとにも「スマホで見られるようにしたい」「会員サイトをスマホ対応したい」という相談が増えていきました。

この時代に特に印象的だったのが、「ソーシャルログイン」ブームです。FacebookやTwitter、Googleのアカウントを利用して会員登録を簡略化する仕組みで、多くの企業が導入を進めました。当時は「面倒な会員登録フォームをなくせば会員数が増える」という期待感があり、私自身も多くの案件で導入に関わりました。

しかし、特にTwitterログインは話題性こそありましたが、実際のソーシャルログイン利用率は驚くほど低かったのです。今であれば、その理由も理解できます。ユーザーは必ずしもSNSアカウントとサービスを結び付けたいわけではなく、企業が考える「便利」と利用者が感じる「便利」には、ギャップがありました。

それでも当時は、認証仕様を調べ、SNSとの連携を実装し、何度もテストを繰り返していました。今となっては懐かしい思い出です。

この経験から私は、「話題になる技術と、本当に使われる機能は違う」ということを学びました。今振り返ると、この教訓は現在のAIブームにも通じるものがあると感じています。

スマートフォンが会員獲得の常識を変えた時代(2011〜2014)― ソーシャルログインブーム、Twitterログインは話題性はあっても実際の利用率は驚くほど低かった。『話題になる技術と、本当に使われる機能は違う』という学び
03 第3の転換点

サブスクリプションが経営テーマになった時代 2015〜2019

2015年前後は、会員ビジネスにとって大きな転換点だったと感じています。Netflix、Amazonプライム・ビデオ、Spotifyなどが日本で急速に普及し、「サブスクリプション」という言葉が一般的になりました。AdobeやMicrosoftも買い切りモデルから月額課金モデルへ移行し始め、世の中では「これからはサブスクの時代だ」と言われるようになりました。

実際、私自身も営業先でサブスクリプションの話をすると、多くの企業が強い関心を示してくれました。しかし、当時の現場の空気は、今振り返ると少し違っていました。

興味はある。話も聞きたい。でも、本当に儲かるのかは分からない。そんな空気が強かったのです。

「会員制にしたら本当に黒字化できるのか」「継続課金モデルは日本でも成立するのか」「解約が増えたらどうなるのか」。そんな質問を、数え切れないほど受けました。今では多くの企業がサブスクリプションを採用していますが、当時はまだ、挑戦する企業よりも様子を見る企業の方が圧倒的に多かったのです。

私にとってこの時代は、「サブスクが流行した時代」ではなく、「継続課金モデルが経営課題として真剣に検討され始めた時代」でした。

正直に言うと、私は今でも「サブスク」という言葉に少し違和感があります。一般的には「定額で使い放題」というイメージが強いからです。一方で、私が長年取り組んできたのは、会費徴収、定期購入、継続課金、会員制サービスといった仕組みでした。もちろん現在では「サブスク」が継続課金モデル全般を表す言葉として定着していますが、私の感覚では、「サブスク」は流行語であり、「継続課金」は事業モデルそのものです。

当時、多くの企業が私にこう尋ねました。「サブスクは流行っているけれど、本当に儲かるのですか?」今振り返ると、この問いこそが時代を象徴していたように思います。

サブスクリプションが経営テーマになった時代(2015〜2019)― NetflixやSpotify、Adobe、Microsoftが月額課金モデルへ移行。『これからはサブスクの時代だ』と言われる一方、現場には『興味はある、でも本当に儲かるのかは分からない』という空気があった。サブスクが流行したのではなく、継続課金モデルが経営課題として真剣に検討され始めた時代だった。
04 第4の転換点

会員向けサービスが一斉にオンラインへ移行した時代 2020〜2024

2020年、新型コロナウイルスの感染拡大は、会員ビジネスにも大きな変化をもたらしました。在宅勤務が広がり、研修はZoomへ、学習はeラーニングへ、セミナーはオンライン配信へ。人が集まれなくなったことで、会員向けサービスそのものをインターネット上で提供する必要が生まれました。

私のもとに寄せられる相談内容も大きく変わりました。以前は「会費を集めたい」「継続課金を始めたい」という相談が中心でしたが、この頃から「オンライン講座を提供したい」「会員向け動画を配信したい」「資格更新をオンライン化したい」「会員向けポータルを作りたい」という相談が急増していきます。

特に印象的だったのは、映像や出版の世界です。マンガや雑誌の電子化は以前から進んでいましたが、この頃になると、それ以外の分野でも本格的なオンライン化が始まりました。研修教材、専門書籍、業界誌、セミナー動画、講演アーカイブ。これまで紙や会場で提供されていたコンテンツが、次々と会員サイト上で提供されるようになったのです。

私が感じたのは、会員サイトの役割そのものが変わったことでした。創業当初、会員サイトは「会費を集める場所」でした。しかしこの頃から、会員向けサービスの多くがオンライン化され、会員サイト上で提供されるようになります。

会員サイトは「会費を集める場所」から「価値を届ける場所」へ変わった。私にとって、この変化こそが2020年代前半を象徴する出来事でした。

会員向けサービスが一斉にオンラインへ移行した時代(2020〜2024)― コロナ禍で研修はZoomへ、学習はeラーニングへ、セミナーはオンライン配信へ。マンガ・雑誌、専門書籍・教材、業界誌、セミナー動画・講演アーカイブが会員サイト上で提供されるようになり、会員サイトの役割は『会費を集める場所』から『価値を届ける場所』へと変わった。
この時代の成功条件

会員サイトを「持つこと」ではなく、会員サイトを通じて継続的に価値を届けられるか

05 第5の転換点

AIが会員ビジネスの前提を変え始めた時代 2025〜

2024年頃、生成AIはすでに大きな話題になっていました。しかし当時、多くの企業にとってAIはまだ「試してみるもの」でした。ところが2026年の春頃から、空気が大きく変わり始めます。「AIを使うべきか」ではなく、問題意識を持った企業が「AIをどう事業に組み込むか」を検討しだしたのです。

私たちがこれまで携わってきた成功事例を振り返ると、ある共通点があります。それは、先見性のある経営者や事業担当者が存在したこと。ドコモ公式サイトが伸びる前。サブスクリプションが一般化する前。オンライン化が当たり前になる前。そしてAIが経営課題になる前。彼らはいつも、まだ正解が見えていない段階で挑戦していました。

私自身、そうした企業から「お任せするから、やってみてほしい」と言われる場面をいくつか経験してきました。振り返ると、私たちの代表的な実績の多くは、そのような挑戦から生まれています。

2025年は「AIを試してみる時代」でした。しかし2026年は、「AIと共に事業を運営する時代」へと変わり始めています。

この時代の成功条件

AIを導入することではなく、AIと共に、新しい事業の形を創れるか。そこに競争力の差が生まれ始めています。

20年間で、会員サイトの役割はこう変わった

5つの時代を振り返ると、会員サイトに求められる役割が、段階的に重心を移してきたことが見えてきます。

時代キーワード会員サイトの役割
2007〜2010キャリア課金会費を集める
2011〜2014スマートフォン会員と出会う
2015〜2019サブスクリプション継続課金を支える
2020〜2024オンライン化価値を届ける
2025〜AI次の4つを実現する

AI時代の会員ビジネス

創業当初、会員サイトは「会費を集める場所」でした。その後、会員との接点となり、継続課金を支える基盤となり、オンラインで価値を届ける場所へと進化してきました。そして今、会員サイトは単なるシステムではなく、AIと共に新しい価値を創り出す基盤へと変わろうとしています。

これからの会員ビジネス

AIによって変わるのは業務効率だけではありません。企業と会員のつながり方そのものが変わり始めています。これからの会員ビジネスは、企業がサービスを提供し、会員が利用するだけの関係ではありません。企業・会員・AIが相互につながりながら、新しい価値を生み出していく時代です。

AI時代の会員ビジネス/これからの会員ビジネス ― 会員サイトは「会費を集める場所」から「会員との接点」「オンラインで価値を届ける場所」へと進化し、いまAIと共に新しい価値を創り出す基盤へ。企業・会員・AIが相互につながり、価値を提供する側と受け取る側から、共に価値を創る関係へ変わろうとしている。

当社が伴走する領域

私たちは創業以来、会員管理システム、継続課金基盤、会員向けサービス構築、コミュニティ運営支援、そしてAI活用支援まで、会員ビジネスのあらゆるフェーズを支援してきました。

会員管理システム
継続課金基盤
会員向けサービス構築
コミュニティ運営支援
AI活用支援

20年前、私たちが支援していたのは「課金の仕組み」でした。そして今、私たちが支援しているのは企業と会員の未来の関係づくりです。会員ビジネスの「これから」を、これからも一気通貫で支援していきます。

AI時代の会員ビジネス診断

あなたの組織では、次のことが整理できていますか?

  • AIで削減できる業務が明確になっている
  • AIで生まれた時間を何に使うか決まっている
  • 会員ごとに異なる価値提供を設計している
  • AIを事業モデルにどう組み込むか構想がある

もしチェックが付かない項目があれば、それは次の成長機会かもしれません。AI時代の会員ビジネスは、「AIを導入すること」ではなく、AIを活用してどんな新しい価値を生み出すかが重要になり始めています。

よくあるご質問(FAQ)

Qサブスクと継続課金は同じ意味ですか?
A

一般的には同じ意味で使われることも多いですが、私は少し違うものとして捉えています。

サブスクリプション(サブスク)という言葉には、NetflixやSpotifyのような「定額で利用し放題」というイメージがあります。実際、多くの方はサブスクと聞くと、月額料金を支払えば自由にサービスを利用できるモデルを思い浮かべるのではないでしょうか。

一方で、私が20年以上携わってきたのは「継続課金」の仕組みです。継続課金とは、一定期間ごとに料金を請求し続ける仕組み全般を指します。例えば、協会や学会の年会費、オンラインサロンの月額会費、定期購入サービス、SaaSの利用料金、有料会員サイトの月額課金などは、すべて継続課金モデルです。

つまり、サブスクは継続課金モデルの一種であり、継続課金の方がより広い概念だと考えています。私自身は、サブスクという言葉が広く使われる以前から、会費徴収や定期購入、会員制サービスの仕組みづくりに携わってきました。そのため、「サブスク事業」というよりも、「継続課金事業」という表現の方がしっくりきます。

重要なのは、サブスクという言葉を使うことではありません。継続的に価値を提供し、その対価として継続的に料金をいただける仕組みを作れるかどうか。それこそが、会員ビジネスの本質だと考えています。

Q会員サイトと会員管理システムは何が違うのですか?
A

会員ビジネス業界では、この2つの言葉は明確に区別される場合もあれば、ほぼ同じ意味で使われる場合もあります。

一般的に「会員サイト」とは、会員登録、ログイン、コンテンツ閲覧、コミュニティ利用、各種手続きなどを含む、会員向けサービス全体を指すことが多い言葉です。そのため非常に広い意味で使われる業界用語の一つと言えます。

一方で「会員管理システム」は、会員情報管理、継続課金、契約管理、決済管理などを行う仕組みやSaaSサービスを指すことが多くあります。

ただし実際の現場では、両者の境界はそれほど明確ではありません。例えば私たちが提供するPayAI NEXTは、会員情報や継続課金を管理する「会員管理システム」であると同時に、会員向けのマイページや各種サービスを提供する「会員サイト」でもあります。

そのため、「会員サイト」と「会員管理システム」は対立する概念ではなく、重なり合う部分の多い言葉だと考えています。会員向けサービス全体を表現する際には「会員サイト」、その運営基盤やSaaSサービスを表現する際には「会員管理システム」という言葉が使われることが多い、と理解すると分かりやすいでしょう。

Q会員サイトを作れば、どれくらいの確率で成功しますか?
A

これはよくいただく質問ですが、正直なところ正確な数字は分かりません。ただ、20年以上にわたり会員ビジネスの立ち上げや運営を見てきた実感としては、「会員サイトを作っただけ」で成功するケースはそれほど多くありません。

なぜなら、会員サイトはあくまで仕組みだからです。ホームページを作っただけで売上が上がるわけではないのと同じように、会員サイトを作っただけで会員が増えたり継続したりするわけではありません。

実際に成功している企業には共通点があります。それは、会員サイトを作ることを目的にせず、「会員との関係づくり」を目的にしていることです。例えば、継続的に価値ある情報を提供する、コミュニティを育てる、学習コンテンツを充実させる、会員限定サービスを用意する、AIを活用して個別最適化を進める——など、会員であり続ける理由を設計しています。

私自身の経験では、システム選定よりも「会員になった後に何を提供するのか」が明確な企業ほど成功確率が高いと感じています。会員サイトはゴールではありません。会員との関係を長く育てるためのスタート地点なのです。

QAIは会員ビジネスでどのように活用できますか?
A

近年は、AIを活用した会員向けサービスの相談が急増しています。例えば、会員からの問い合わせ対応、学習コンテンツの個別最適化、レコメンド機能、会員データ分析、コンテンツ作成支援など、活用領域は広がっています。

ただし、重要なのはAIを導入することではありません。「AIを活用して会員体験をどう向上させるか」という視点が必要です。

また、AI活用の正解は企業によって大きく異なります。同じ会員ビジネスでも、協会・団体、オンラインスクール、コミュニティ、メディア、SaaSなどでは、会員との関係性や提供している価値が異なるからです。そのため、ある企業で成功したAI活用が、そのまま別の企業でも成功するとは限りません。

私は、2025年が「AIを試す時代」だったとすれば、2026年は「AIと共に事業を運営する時代」の始まりだと考えています。しかし、その進み方や活用方法は企業ごとに違います。だからこそ、自社の会員ビジネスにおいてAIをどのように活用できるのかを考えることが重要だと思います。

岸本 健志
会員ビジネスLab 主任研究員 / ハートランドITイノベーション代表

1997年よりインターネット業界に従事。2007年の創業以来、EC、メディア、SaaS、コミュニティサイトなど数多くの会員ビジネスの立ち上げと成長を支援。

30年近く会員システムの設計・運用に携わる中で、システムは「会員を管理するもの」から「人と人との関係(Relationship)を育てるもの」へ転換すべきだと確信。現在は、AI時代における次世代のシステム設計思想として「Relationship OS」を提唱しています。

また、自身も宿泊施設の運営で現場に立ち続け、『起きている時間はすべて仕事であり、システムへの探求』という圧倒的な熱量で、会員ビジネスの未来に向き合っています。

「人との関係は設計できるのか」という問いに、これからも人生をかけて愚直に向き合い続けていきます。

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