別名:数字のひとりあるきシリーズ
EC・サブスク業界の都市伝説
「かご落ち率は70%」「チャーンの20〜40%は決済失敗による意図しない解約」——。業界で常識のように語られる数字があります。けれど、その数字は誰が、いつ、どんな条件で調べたものなのでしょうか。この連載は、広く知られた数字を否定するためのものではありません。その出どころまで一つずつ遡り、数字が何を意味しているのかを確かめていく記録です。
一つの調査結果が、業界記事に引用され、セミナー資料になり、営業資料に使われ、やがて「業界の常識」になる。その過程で、「誰が・どの条件で調べたか」という前提は少しずつ削ぎ落とされ、数字だけが残っていきます。私はこれを「数字のひとりあるき」と呼んでいます。
- 調査結果
- 業界記事
- セミナー資料
- 営業資料
- 業界常識
数字を使う前に、その分母と出どころを確かめる。
第1回かご落ち率70%
2000年代、EC現場が「カート途中離脱」に注目した理由は、売上不振の"理由"は測れなくても、離脱の"数"は測れたから。そもそも「カートに入れた=買うつもり」なのかという違和感の始まりを振り返ります。
第2回なぜ「70%」は常識になったか
「70%」は Baymard Institute が公表する、主に欧米中心の平均値で、10年以上ほぼ横ばい。その約58%は「見ているだけ」のブラウジング層です。決済習慣も配送もポイント文化も違う日本に、そのまま当てはめてよいのかを問い直します。
第3回「70%」はなぜ生き残ったか
数字が記号として扱いやすく、文脈を剥ぎ取られながら"業界の共通言語"になっていく。調査結果が営業資料に変わる過程で、数字の意味はすり替わります。本当の都市伝説は、数字そのものより「数字があるから正しい」という受け手の盲信かもしれません。
第4回「チャーンの20〜40%」は誰が言い始めたのか
舞台はECからサブスクへ。「チャーンの20〜40%は決済失敗」という数字は、全契約者の解約率ではなく、発生したチャーンの内訳を指します。同じデータでも、分母を取り違えると印象が大きく変わることを確かめます。
第5回「チャーン20〜40%」の原典を探す
引用を何度遡っても、算出過程を示す一次資料にはたどり着けない。出どころは、分析サービス ProfitWell社 と共同創業者 Patrick Campbell 氏の発言に集約されます。引用回数の多さは、調査の独立性を意味しません。
第6回「20〜40%」を語った男
数字を語っていたのは、研究者ではなく起業家だった。Google 勤務を経て分析サービスを立ち上げた実務家 Patrick Campbell 氏の輪郭をたどると、ProfitWell社 の製品「Retain」という新たな名前の前で、また手が止まります。
数字は、事実の一部を示します。しかし、数字だけでは真実までは分かりません。その数字が何を測り、誰が、何のために使っているのか。そこまで見て初めて、数字は本当の意味を持ちます。
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テーマは違っても、通底するのは「数字と言葉を、出どころから確かめる」という姿勢です。あわせてどうぞ。
