Home/ 会員ビジネスLab/ 大人の算数・国語・論理的思考
会員システム設計論 ・ 特別編

会員システムを使う人の、

大人の算数国語論理的思考

会員システムを使っていると、ときどき小さな疑問に出会います。同じ割引率なのに、計算結果が合わない。同じ言葉を使っているのに、担当者によって話が違う。一つひとつの条件は正しいはずなのに、組み合わせるとうまく動かない。こうした出来事は、特別に難しい技術の問題とは限りません。金額の単位、言葉の意味、条件の順番——普段はあまり意識しない違いの中に、理由が隠れていることがあります。

この連載で扱うのは、計算問題ではありません。同じ計算式を使っているのに、なぜシステムごとに答えが変わるのか。その背景にある「決め方」を考える連載です。お金の計算は、数式だけでは決まりません。何を基準にし、どの順番で処理し、どの数字を記録として残すかまで決めて、初めてシステムになります。

岸本 健志
岸本 健志
会員ビジネスLab 主任研究員 / 代表
3 部構成
About — この連載について

会員システムでは、画面や機能を決めただけでは、まだ決めきれないことが残ります。こうした疑問をたどっていくと、計算の単位、言葉の意味、条件の順番といった、普段は見えにくい部分に行き着きます。この連載では、日々の業務で起こる身近な疑問を、三つの視点から整理します。

この連載は、税務や会計の解説ではありません。金額を扱うシステムで、なぜ計算のずれや矛盾が生まれるのかを、設計の視点から考えるものです。

同じ割引率なのに、
金額が合わない。

同じ言葉なのに、担当者ごとに
意味が違う。

一つひとつの条件は正しいのに、
組み合わせると矛盾する。

日々の業務の疑問を、三つの視点から整理します。

1枚で全体像をつかむ この連載の背骨を、まとめて点検できます 金額仕様で決めるべきことを整理した「12の設計判断チェックリスト」(無料公開)
Part 1
大人の算数
お金の疑問をひも解く

金額を、何を基準に・どの単位で・どの順番で計算し、どこで端数を丸めるか。その違いで、同じ条件でも結果が変わることがあります。日頃目にする金額が、どう作られているのかを考えます。

Part 2
大人の国語
言葉のずれを見つける

誰が・いつ・どこで・何を・なぜ・どのように。5W1Hを手がかりに、同じ言葉を違う意味で使っていないかを確かめます。上手な文章ではなく、人によって意味が変わらない言葉を。

Part 3
大人の論理的思考
条件のつながりを整理する

条件をどうつなぎ、どの順番で判定し、例外が重なったときどれを優先するか。一つずつ見ると正しい条件が、組み合わせるとうまく動かない理由を整理します。

Who — この連載を読んでほしい人

対象は、エンジニアだけではありません。

会員制度を企画する人 システムを発注する人 管理画面を使う人 運営ルールを考える人 改修を相談する人

「なぜ、この金額になるのだろう」「なぜ、担当者によって説明が違うのだろう」「なぜ、条件を追加したら別のところがおかしくなったのだろう」。そう感じたことのある人に読んでほしい連載です。

第1部

お金を扱う大人の算数

ここでいう算数は、難しい数式の話ではありません。請求金額・割引・ポイント・送料・税金・返品。普段使っている金額が、何を基準に・どの単位で・どの順番で・どこで丸められ・どの数字をもとに作られているのかを見ていきます。

第1章

丸め方を決める

同じ「15%引き」でも、端数をどこで・どう処理するかで最終金額は変わります。計算の一番手前にある「丸め」の決め方から見ていきます。

この章で伝えること:「15%引き」だけでは、まだ仕様になりません。

第2章

基準となる数字を決める

税込から税抜は完全には戻せません。では何を基準の数字に据えるのか。税込・税抜のどちらを起点にし、両方を持つときは何を正本にするかを決めます。

この章で伝えること:数字を両方持つことと、正解を二つ持つことは違います。

03

同じ注文なのに、なぜ税抜合計が合わないのか

税込価格から税抜金額を逆算すると、端数が生まれます。商品ごとに税抜へ戻すのか、注文全体から税抜へ戻すのか。計算するまとまりが違えば、明細を足した金額と注文全体の金額が一致しないことがあります。

商品ごとに逆算注文全体で逆算明細合計 vs 注文合計
この回の問い 同じ注文なのに、なぜ明細合計と注文合計がずれるのか。
公開中 ・ この回を読む
04

税込と税抜、どちらを基準にすべきなのか

「それなら最初から税抜で管理すればよいのでは」——第2回を読むと、そんな疑問も生まれます。原価管理・卸売り・管理会計では、税抜を基準にする考え方があります。一方、消費者向けのECや会員サイトで、お客様が目にしているのは税込金額です。どちらが常に正しいという話ではなく、どちらを基準にすれば利用者に見える金額と内部の計算がずれにくいかを考えます。

税込500円引き1ポイント1円税込5,000円以上で送料無料
この回の問い お客様に見えている金額と、計算の基準はそろっているか。
公開中 ・ この回を読む
05

税込と税抜、両方で管理すればよいのではないか

「基準を一つに決めるなら、両方を保存しておけば安心なのでは」。たしかに保存はできます。しかし、保存することと、計算の基準にすることは違います。両方を商品価格の原本にすると、矛盾した数字まで正式データになります。人が決める数字と、システムが計算する数字の境界を考えます。

保存 vs 基準人が決める・機械が計算商品マスターと注文記録
この回の問い 人とシステムの境界を、どこに引くのか。
公開中 ・ この回を読む
第3章

処理の順番と配分を決める

送料無料の判定、割引の配分、返品時に返す金額、注文の作り直し。単独では正しい処理も、どの順番で・どう組み合わせるかで答えが変わります。

この章で伝えること:単独では正しい処理も、組み合わせると答えが変わります。

06

送料無料は、いつ決まるのか

「税込5,000円以上で送料無料」。簡単に見える一行です。しかし、クーポンやポイントが入ると、その5,000円がどの時点の金額なのかで結果が変わります。同じ注文・同じクーポンでも、判定の順番だけで支払額が550円変わる。何を合計し、いつ判定するのかを考えます。

クーポン適用の前 / 後ポイントは値引きか支払いか画面の案内と最終金額
この回の問い その「5,000円」は、どの時点の、どの金額なのか。
公開中 ・ この回を読む
07

500円引きを、商品ごとにどう分けるのか

注文全体の500円引き。合計の計算は一つでも、商品ごとの明細へ分けると小数が生まれます。比例配分して切り捨てると、500円引きのはずが498円引きに。残った2円をどの商品へ置くのか——割り算だけでは決まらない、余りの置き場所を考えます。

均等配分 vs 比例配分切り捨てで2円足りない余りの置き場所
この回の問い 500円を、どの商品から何円ずつ引くのか。
公開中 ・ この回を読む
08

商品を一つ返品したら、いくら返すのか

500円引きで買った商品の一つを返品する。通常価格を返すと、購入時に配分した割引まで現金で返してしまいます。返金は、現在の価格から新しく計算するものではなく、購入時に確定した計算を逆にたどるもの。そのために残しておく数字を考えます。

通常価格ではなく実負担額再配分すると1円ずれる購入時の記録を残す
この回の問い 返金は、どの時点の、どの計算をたどるのか。
公開中 ・ この回を読む
09

実務では、注文を作り直すことがある

返品には、購入時の計算を逆にたどる部分返金だけでなく、元の注文を取り消して、残す商品で作り直す再注文もあります。クーポン条件、送料、ポイントはどうなるのか。担当者ごとに方法が違うと、返金額だけでなく売上や返品の記録も揃わなくなる——使い分けの条件を考えます。

部分返金 vs 再注文条件の再判定か引き継ぎか決算で数字が合わない
この回の問い どの条件なら部分返金し、どの条件なら作り直すのか。
公開中 ・ この回を読む
第4章

計算結果ではなく取引を設計する

最終金額が同じでも、記録は同じとは限りません。結果から元の数字を戻し、組み合わせが生む設計限界まで見て、取引そのものの設計へ着地します。

この章で伝えること:最後の金額を合わせるだけでは、システムは成立しません。

10

最後の2,000円が合っていても、会社の数字は合わない

お客様の最終負担は、どの方法でも2,000円。しかし、一部返金か、取消と再注文か、決済側だけの返金かで、売上・返金・取消・注文件数の集計は同じになりません。決算をまたぐと、時間の置き場所も変わる——数字の置き場所を見る余談回です。

同じ2,000円でも途中が違う501円をどの合計へ入れるか年度をまたぐと見え方が変わる
この回の問い 最後の金額が同じなら、会社の数字も同じなのか。
公開中 ・ この回を読む
11

結果から元の金額は戻せるのか ― 割り戻し計算は記録の代わりになるのか

20%引きで800円になった商品。元の価格は、800円に20%を足しては戻りません。800円は元の80%だから、800円÷80%=1,000円。残っている割合で割る「割り戻し計算」を、手数料控除後の入金額や税込→税抜でも見ていきます。

20%を足しては戻らない残り80%で割る分数なら4で割って5を掛ける
この回の問い 今見ている金額は、元の何%なのか。
公開中 ・ この回を読む
12

「なんでもできる」の先に、設計限界がやってくる

1998年、買い物かごを単純にするため税込価格を選んだ。あれから30年、ポイント・クーポン・返金が絡み合い、組み合わせは掛け算で増えていく。「なんでもできる」は、なぜ限界を迎えるのか。

組み合わせは約591億通り分けても限界は残る設計思想とは何を捨てるか
この回の問い 「なんでもできる」を求めると、なぜ設計は限界を迎えるのか。
公開中 ・ この回を読む
13

25円を、14日間さがした 実録編

ここまでは作った例。今回は実話です。月次の締めで25円が合わない。値引きにも商品にも税率にも25円はいない。14日間さがして分かったのは、差額の金額は原因を教えてくれないということ。理論12回を、実際の一件で裏書きします。

誰も間違えていない差額原因は第9段の未決金額ではなく索引をさがす
この回の問い 差額の「金額」は、原因を教えてくれるのか。
公開中 ・ この回を読む
第14回以降 ・ 会員システムで頻繁に起きる金額計算へ
送料送料無料は、割引前かクーポン後か
ポイントポイントは値引きなのか、支払いなのか
日割り月額料金の日割りは、何日で割るのか
税率税率が変わったとき、どの価格を守るのか
算数編で考えること

金額は、計算式だけを見ても分からないことがあります。
単位・順番・基準・丸め・配分を順に見ていくと、合わなかった理由が見えてきます。

第2部

言葉をそろえる大人の国語

国語編で扱うのは、文章を上手に書く方法ではありません。業務の中で何気なく使っている言葉を、少し立ち止まって見直します。誰が・いつ・どこで・何を・なぜ・どのように——5W1Hを手がかりに、同じ言葉を違う意味で使っていないかを確かめます。

「会員はいつでも解約できます。」

— 意味は分かるように見えて、人によって思い浮かべる手続きが違うかもしれない。
  • 誰が解約するのか
  • いつまでに申請するのか
  • どこから手続きするのか
  • 何を終了するのか
  • どのように処理されるのか
  • 「会員」とは誰か
  • 「いつでも」とはいつか
  • 「解約」とは何を止めることか
国語編で考えること

読みやすい文章と、誰が読んでも同じ意味になる文章は、必ずしも同じではない。

第3部

条件を組み立てる大人の論理的思考

論理的思考編も、難しい論理学の話ではありません。普段使っているルールを、条件のつながりとして見ていきます。条件をどうつなぎ、どの順番で判定し、例外が重なったときどれを優先するか。

「ゴールド会員は、5,000円以上の購入で500円引き。」

— この一文からも、いくつもの疑問が生まれる。
  • ゴールド会員「かつ」5,000円以上なのか
  • ゴールド会員「または」5,000円以上なのか
  • 5,000円は割引前か、割引後か
  • クーポンと併用できるのか
  • 返品後に5,000円を下回ったらどうするのか
論理的思考編で考えること

条件が正しくても、つなぎ方や順番によって結果は変わる。

Convergence — 三つは、別々の話ではない

算数・国語・論理的思考は、それぞれ別の話に見えます。しかし、実際の会員システムでは、一つの要望の中に同時に現れます。

たとえば、こんな要望

「ゴールド会員は、税込5,000円以上の購入で500円引き。ポイントを使っても送料無料。」

算数では

  • 5,000円はどの時点の金額か
  • 500円を商品ごとにどう配分するか

国語では

  • ゴールド会員とは誰か
  • 購入とはどの時点か
  • 送料無料とは何を含むのか

論理的思考では

  • 条件をどの順番で判定するか
  • 例外が重なったとき、どれを優先するか

三つの視点から見ていくと、一つの要望が、どのようにシステムのルールになるのかが見えてきます。

— この連載が一緒に考えたいこと

会員システムを使う人が、プログラムを書く必要はありません。けれど日々の業務では、なぜこの数字になるのか・この言葉はどこまでを指すのか・この条件はどの順番で適用されるのか、といった疑問に出会います。この連載は、それらを正しく教えるためのものというより、これまで何となく感じていた違和感に、理由を見つけるためのものです。

画面を見る前に、
数字の成り立ちを見てみる。
機能名を見る前に、
言葉の意味を確かめてみる。
条件を追加する前に、
順番を並べてみる。

難しい知識を身につけるためではありません。日頃の「なぜ」を、一つずつ解いていく。

本連載は、会員システムの企画・発注・運営・改修に関わる方に向けた、仕様づくりの考え方を扱う読み物です。掲載する金額・割引・条件の例は、いずれも説明のための単純化したモデルであり、特定の制度・税制・事業者の運用を示すものではありません。実際の会計・税務の取り扱いは、最新の法令および専門家の判断にしたがってください。
この連載が、たどり着くところ

会員システムを使う人の、
大人の算数・国語・論理的思考。

More Series ・ 他の特集連載

会員ビジネスLab の、ほかの連載

テーマは違っても、通底するのは「数字と言葉を、出どころから確かめる」という姿勢です。あわせてどうぞ。

会員ビジネスLab トップへ戻る

その要望、
仕様にする前に一度ご相談ください。

金額の丸め・言葉の定義・条件の順番まで、
専門スタッフが無料で整理のお手伝いをします。

お電話でのご相談 / 平日 10:00 〜 19:00 03-6441-0748