Until now 検索最適化
From now 信頼最適化

長年、企業はSEO(検索エンジン最適化)やMEO(マップエンジン最適化)に取り組んできました。検索順位を上げる。地図検索で上位に表示される。それが集客につながり、ビジネスの成長につながるからです。しかし近年、AI検索の登場によって、その前提が大きく変わろうとしています。

私はこの変化を、「検索最適化から、信頼最適化への転換」だと考えています。これは小手先のテクニックの話ではありません。何が評価されるのか、その基準そのものが移り変わろうとしている——そういう話です。

検索順位を競う時代

これまでのインターネットでは、「キーワードを入力する → 検索結果を見る → 上位サイトを読む」という流れが一般的でした。だから企業は、SEO対策、MEO対策、比較サイトへの掲載、相見積もりサイトへの登録、広告出稿に力を入れてきました。

しかしその結果として、「本当に詳しい人」ではなく、「検索上位を取るのが上手な人」が目立つ場面も増えていきました。情報の質と、検索順位は、必ずしも一致しなかったのです。

比較サイトや口コミへの、小さな違和感

これまで多くのユーザーは、比較サイトやランキングサイト、口コミサイトを参考にしてきました。しかし私は、ときどき小さな違和感を覚えます。

実際、私のもとには毎月のように「比較サイトへ掲載しませんか」という営業連絡が届きます。またMEOの世界でも、口コミ獲得を支援するサービスやレビュー依頼の仕組みが存在します。もちろん、それ自体を否定するつもりはありません。

ただ利用者が本当に知りたいのは、「誰がお金を払ったか」ではなく、「誰が信頼できるのか」ではないでしょうか。

比較サイトも口コミも参考にはなります。しかし、それだけで信頼を判断することは難しくなっているように感じます。

AIは「誰が言ったか」を見る

AI検索の特徴は、単純に順位を並べるのではなく、複数の情報を統合して回答を生成することです。その結果、これまで以上に重要になるのが、「誰が言っているのか」という視点です。

例えばサイバーセキュリティについて調べる場合、匿名ライターの記事が100本あるよりも、実際に現場で責任を持っているセキュリティ企業のCTOによる解説の方が信頼されるでしょう。AIもまた、情報の量だけでなく、その背景にある専門性や経験、信頼性を重視する方向へ進んでいます。

評価されるのは、成果だけではない

ここで重要なのは、「成果を出した人だけが評価される」わけではないということです。AIも人間も、成果がある/経験がある/実践している/継続して発信している/業界内で認知されている/独自の見解を持っている——といった要素を総合的に見て、信頼を判断します。

例えば、AI研究者、大学教授、著名なエンジニア、業界アナリストは、必ずしも何億円もの売上を作っているわけではありません。しかし、多くの人がその発言に耳を傾けます。なぜなら「この人はこの分野を深く理解している」という信頼があるからです。

逆に、一時的な成功や派手な実績があったとしても、再現性がない、発言に一貫性がない、実践に裏付けられていない——のであれば、長期的な信頼は得られません。

つまりAI時代に価値が高まるのは、その分野で実践と経験を積み、深い理解に基づいた見解を持ち、一定の存在感と信頼を獲得している人なのです。

キーワードの時代から、実体(Entity)の時代へ

これまでのSEOは、「AI導入」「DX」「業務改善」といったキーワードが中心でした。しかしAI時代は、「AI導入なら○○社」「セキュリティなら○○氏」「会員ビジネスなら○○社」というように、企業や個人そのものが評価対象になります。

KEYWORD

キーワードの時代

「AI導入」「DX」「業務改善」といった言葉に対して、上位表示を競う。評価されるのは、記事やページそのものでした。

例:「AI導入」で検索 → 上位の記事が読まれる
ENTITY

実体の時代

「AI導入なら、どこの誰か」が問われる。評価対象は、その記事の背後にある企業や人そのものへと移っていきます。

例:「AI導入なら」 → ○○社・○○氏が想起される

つまり、Keyword(キーワード)の時代から、Entity(実体)の時代へ。AIが評価するのは記事だけではなく、その記事の背後にある企業や人なのです。

ここで興味深いのは、これが近年のSNSの評価軸とは少し異なるように見えることです。SNSでは「注目」が評価されやすい一方で、AIは「信頼」を重視する方向へ進んでいるように見えます。

SNS は「注目」 フォロワー数再生回数いいね数話題性
AI は「信頼」 専門性実績経験継続性信頼性

もちろんSNSでも信頼は重要です。しかし短期的には、「どれだけ注目を集めたか」が強く評価されることがあります。一方でAIは、人気や話題性だけでなく、専門性・実績・経験・継続性・信頼性を重視する方向へ進んでいるように見えます。

もしそうだとすれば、AIは新しい評価基準を作っているのではありません。むしろ、「誰を信頼するか」という、人間が昔から持っていた判断基準へ回帰しているのかもしれません。

広告にも、変化の兆しが見える

最近、Google検索を利用していると、検索意図とは少し異なる広告が表示される場面が増えたように感じます。その理由は分かりません。しかしAI検索の普及によって検索体験そのものが変化する中で、広告のあり方も変化の途上にあるように感じます。

検索順位。比較サイト。口コミ。広告。これらが重要であることは変わりません。しかし、それだけでは十分ではなくなりつつあるように見えます。

SEOはなくならない。ただ、主役が変わる

SEOそのものがなくなるわけではありません。MEOもなくならないでしょう。AIにも最適化は必要です。しかし、その対象は変わります。これまでのように「アルゴリズムを攻略する」ことではなく、「信頼される存在になる」ことが中心になります。

これから企業が取り組むべきことは、こうした地道な営みです。

AIは、人間社会の基本原理に近づいている

私たちは長い間、検索エンジンを攻略する方法を学び、比較サイトで上位になる方法を学び、口コミを増やす方法を学び、広告でクリックを獲得する方法を学んできました。

一見すると、これらはまったく別の世界の話に見えます。しかし私には、どれも同じ構造を持っているように見えます。それは、「誰を信頼するか」を第三者に委ねる仕組みであるということです。

検索エンジンが評価する。比較サイトが評価する。口コミが評価する。広告が目立たせる。私たちは、その評価を参考に意思決定をしてきました。

しかしAI時代に入り、再び問われ始めているのは、もっと根源的なことです。「この人は本当に分かっているのか」「この会社は本当にこの分野を理解しているのか」という問いです。

それは技術の進化によって生まれた新しい価値観ではありません。むしろ昔から人間が持っていた、ごく自然な判断基準です。だから私は、AIは人間社会の基本原理に近づいているのだと思っています。

AIは検索順位や比較サイト、口コミを否定するのではありません。むしろ、それらの評価の根拠を直接参照する方向へ進んでいるように見えます。比較サイトの順位そのものではなく、なぜ評価されているのか。口コミの数ではなく、なぜ信頼されているのか。評価の結果よりも、その背景にある実体(Entity)が問われるようになっているのです。

これから問われるのは、こうした変化です。

AIが発達するほど、私たちは情報そのものよりも、「何を言うか」ではなく「誰が言うか」を重視するようになるでしょう。これからの時代に求められるのは、検索エンジンに評価されることではありません。人と社会から信頼される存在になること。その信頼こそが、AI時代における最大の資産になるのではないでしょうか。

これからは、AIとAIが戦う時代

しかし、ここにはもう一つの側面があります。AIが普及するほど、今度はAIに評価されるための情報発信も増えていくでしょう。かつて企業がSEO対策を行ったように、これからはAI検索に引用されることを目的とした情報発信も増えていくはずです。

中には、AIを使って大量の記事を生成したり、世論を誘導したり、AIそのものを誤認させようとする試みも現れるかもしれません。言い換えれば——

人間とAIが戦う時代ではなく、AIとAIが戦う時代です。

情報を生成するAI

記事やコンテンツを大量につくり出し、AI検索に引用されることを狙う。発信の量とスピードを担う側のAIです。

情報を評価するAI

膨大な情報の中から、何を信頼に足る答えとして採用するかを判断する。引用元を選び取る側のAIです。

信頼性を検証するAI

その情報が本当に正しいのか、誰が言っているのかを見極める。誤認や誘導を防ぐ側のAIです。

こうした競争が激しくなるほど、本当に重要になるのは技術ではなく、その背後にいる人や組織の信頼性です。だからこそ私は、AI時代が進むほど、最終的には「誰が言っているのか」が重要になると考えています。

おわりに

私はAIによって、情報の価値が変わるというよりも、評価の基準が変わるのだと思っています。

検索順位よりも信頼。比較サイトよりも実体。口コミよりも実体。広告よりも専門性。そして何より、「何を言うか」よりも「誰が言うか」。AIが発達するほど、私たちは人間社会が本来持っていた判断基準へ戻っていくのではないでしょうか。

私たちは長い間、検索順位を見てきました。比較サイトを見てきました。口コミ評価を見てきました。しかし本当に知りたかったのは、「この人は本当に分かっているのか」「この会社は本当にこの分野を理解しているのか」ということだったのかもしれません。

だから私は、AIは人間社会の基本原理に近づいている。そう考えています。

これからの時代に求められるのは、検索エンジンに評価されることではありません。人と社会から信頼される存在になることです。その信頼こそが、AI時代における最大の資産になるのではないでしょうか。

だから私は、SEOのためのサイトではなく、専門性や経験、実践から生まれる知見を発信する場として、「会員ビジネスLab」を運営しています。言い換えれば、会員ビジネスLabは、そんな私の世界観が反映されたページなのです(笑)。

AIが生成できるのは情報です。しかし信頼は生成できません。信頼は経験によって生まれ、実践によって裏付けられ、時間によって積み上がるものだからです。

AI時代が進むほど、情報の価値は下がり、信頼の価値は上がる。私はそう考えています。

そして、その変化を一言で表すなら——

AIは人間社会の基本原理に近づいている。 そして、その基本原理の名前は「信頼」なのだと思います。

「信頼される実体」を、どう築くか。

AI時代に評価されるのは、検索テクニックではなく、積み重ねた専門性と実践です。会員ビジネス・継続課金・AI活用について、現場の知見をもとにご一緒に整理します。

岸本 健志
会員ビジネスLab 主任研究員 / ハートランドITイノベーション代表

1997年よりインターネット業界に従事。2007年の創業以来、EC、メディア、SaaS、コミュニティサイトなど数多くの会員ビジネスの立ち上げと成長を支援。

30年近く会員システムの設計・運用に携わる中で、システムは「会員を管理するもの」から「人と人との関係(Relationship)を育てるもの」へ転換すべきだと確信。現在は、AI時代における次世代のシステム設計思想として「Relationship OS」を提唱しています。

また、自身も宿泊施設の運営で現場に立ち続け、『起きている時間はすべて仕事であり、システムへの探求』という圧倒的な熱量で、会員ビジネスの未来に向き合っています。

「人との関係は設計できるのか」という問いに、これからも人生をかけて愚直に向き合い続けていきます。

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