法人や個人事業主を対象としたBtoBサイトが増えています。業務用SaaS、会員管理システム、オンライン仕入れ、広告サービス、業務講座——これまで見積書や申込書で契約していたサービスも、Webサイト上で申込みから支払いまで完結するようになりました。

そこでよく聞かれるのが、「法人向けのサービスなら、特商法表記は必要ないのではないか」という質問です。法律上は、営業のため・営業として締結する純粋な事業者間取引について、特定商取引法が適用されない場合があります。しかし、オンラインでクレジットカード決済やコンビニ決済を導入するのであれば、実務上、この表記を避けることは困難です。

カード会社や決済代行会社は、加盟店審査の際に、運営事業者・サービス内容・料金・支払方法・提供時期・契約期間・解約や返金条件などをサイト上で確認します。そのため、BtoBサイトでも、最初から「特定商取引法に基づく表記」または同等の販売条件ページを用意するのが実務的です。

01 BtoBでも、決済審査では販売条件を確認される

カード会社や決済代行会社が確認しているのは、ページの有無だけではありません。そのサイトで、どのような取引が行われるのかを見ています。主に確認されるのは、次の内容です。

これらが確認できなければ、決済会社は取引内容やリスクを判断できません。BtoBだから審査が不要になるわけではありません。むしろ、長期契約・高額な初期費用・継続課金・サービス提供前の前払いがあるBtoBサービスでは、契約条件を詳しく確認されることがあります。表示事項の基本や消費者向けの書き方は特定商取引法に基づく表記の書き方、審査の観点はクレジットカード加盟店審査の要点もあわせてご覧ください。

02 記載例 — 架空の業務用クラウドサービス

以下は、法人および事業目的で利用する個人事業主を対象とした、業務用クラウドサービスの記載例です。そのまま流用するものではありません。実際の料金・決済方法・契約期間・サービス開始日・解約処理に合わせて書き換える必要があります。

項目記載例
サービス提供事業者〇〇〇株式会社
運営責任者山田 太郎
所在地〒100-0001 東京都千代田区千代田1番1号 ビジネスビル5階
電話番号03-1234-5678
メールアドレスsupport@example.jp
対象法人および事業として本サービスを利用する個人事業主
利用料金月額33,000円(税込)
初期費用110,000円(税込)
利用料金以外に必要な費用インターネット接続料金、通信料金および銀行振込手数料は、利用者の負担となります。
支払方法クレジットカード決済、コンビニ決済または銀行振込
クレジットカードの支払時期申込時に初期費用および初回利用料金を決済します。翌月以降は、初回決済日と同じ日に毎月自動決済します。
コンビニ決済の支払時期申込日から7日以内にお支払いください。支払期限までに入金が確認できない場合、申込みは取り消されます。
銀行振込の支払時期請求書発行日から30日以内に、指定口座へお振り込みください。
サービスの提供時期申込内容および入金の確認後、原則として5営業日以内に利用環境を発行します。
契約期間利用開始日から1年間
契約更新契約期間満了日の30日前までに更新停止の申出がない場合は、同一条件で1年間更新します。
中途解約契約期間中のお客様都合による中途解約は、原則としてお受けしていません。
返金支払済みの初期費用および利用料金は、当社の責めに帰すべき場合を除き返金しません。
解約方法契約管理画面または所定の解約申請フォームからお申し込みください。
利用停止利用料金の支払いが確認できない場合、利用規約に基づきサービスの提供を停止することがあります。
動作環境本サービスの利用に必要な動作環境は、当社サイトの「推奨環境」をご確認ください。

※ この例は、初期費用あり・年間契約・複数の決済手段を想定したものです。単発決済・月次更新・物販などでは、支払時期・契約期間・返金の欄が大きく変わります。

03 「特定商取引法に基づく表記」という名称でよいか

純粋なBtoB取引では、一般消費者向けと同じ特商法表示が法律上必須とは限りません。それでも、決済代行会社が「特定商取引法に基づく表記」という名称での掲載を求めることがあります。決済審査を優先するなら、この名称で統一して問題ないでしょう。

より厳密に分けたい場合は、次のような名称も考えられます。大切なのはページ名ではなく、契約者と決済会社が必要な情報を確認できることです。

04 「法人向け」と書くだけでは、BtoB契約にならない

サイトに「法人向け」「ビジネス専用」と書くだけで、すべての契約が当然に事業者間取引になるわけではありません。実際に確認すべきなのは、誰が、何のために契約するかです。

法人が会社の業務で利用するために申し込むのであれば、事業目的であることは比較的明確です。一方、個人事業主の場合は、契約名義だけでは判断できません。個人事業主が店舗運営のために予約システムを契約する場合は通常、事業目的の契約ですが、同じ個人事業主が私生活のために利用するサービスを契約する場合は、一般消費者として扱われる可能性があります。

対象を明記する例

本サービスは、法人および事業として本サービスを利用する個人事業主を対象としています。個人の私的利用を目的としたお申込みは受け付けていません。

BtoB専用サイトとして運営する場合は、対象を明記します。申込フォームでも、法人名・屋号・事業内容・利用目的などを確認します。

05 責任者名と電話番号は掲載する

BtoBサイトでも、「運営責任者の個人名を掲載したくない」「営業電話が増えるので電話番号を載せたくない」という相談があります。しかし、決済審査では、事業者の実在性や問い合わせ体制を確認するため、責任者名や電話番号の掲載を求められることがあります。

法律上、一部の表示を省略できる場合があっても、決済審査で掲載を求められないとは限りません。オンライン決済を導入する予定なら、最初から次の情報を掲載する方が審査を進めやすくなります。

電話対応の負担を抑えつつ載せる書き方

電話番号:03-1234-5678
受付時間:平日10時から17時まで
サービスに関するお問い合わせは、記録保持のため、原則としてお問い合わせフォームからお願いいたします。

06 コンビニ決済では、支払期限を明記する

コンビニ決済では、申込みと支払いが別のタイミングになります。そのため、次の内容を明記します。

記載例

コンビニ決済を選択した場合、申込日から7日以内にお支払いください。支払期限までに入金が確認できない場合、申込みは自動的に取り消されます。サービスは、入金確認後5営業日以内に提供を開始します。

手数料を利用者が負担する場合は、その金額も記載します。

07 継続課金は、課金日まで書く

BtoB向けのSaaSや会員サービスでは、継続課金が多く利用されます。この場合、「月額33,000円」と書くだけでは足りません。次の内容を明記します。

1か月単位で更新する場合

申込時に初回利用料金を決済します。翌月以降は、初回決済日と同じ日に毎月自動決済します。

契約期間は1か月です。解約手続が完了するまで、1か月ごとに自動更新されます。

次回決済日の前日までに解約手続を完了した場合、次回以降の請求は行いません。

08 年間契約を、月額契約のように見せない

BtoBサービスでは、1年間の契約料金を毎月請求する料金体系がよくあります。しかし「月額33,000円」とだけ表示すると、毎月自由に解約できる契約だと受け取られる可能性があります。1年間の固定契約であれば、契約期間と支払総額を明記します。

1年分を毎月請求する場合の表示

契約期間は、利用開始日から1年間です。
利用料金は年額396,000円(税込)で、月額33,000円(税込)を12回に分けてお支払いいただきます。

毎月支払うことと、1か月ごとの契約であることは同じではありません。中途解約に応じない場合も、利用規約だけでなく、料金ページや申込画面で示します。

記載例

本契約は1年間の固定期間契約です。契約期間中のお客様都合による中途解約は、原則としてお受けしていません。

09 法人契約なら、クーリング・オフは無効なのか

「法人なので、クーリング・オフは無効と書いてよいですよね」という質問があります。「クーリング・オフを無効にする」という表現は正確ではありません。事業目的の法人契約では、一般消費者向けの法定クーリング・オフが、通常は最初から適用されないという整理になります。

記載例(対象を示す)

本サービスは、法人および事業目的で利用する個人事業主を対象としたサービスです。事業者間取引には、一般消費者を対象とするクーリング・オフ制度は原則として適用されません。

記載例(法令の留保を置く)

本契約は事業者間契約であり、法令に別段の定めがある場合を除き、クーリング・オフの対象ではありません。

「一切適用されません」と断定するよりも、「原則として」「法令に別段の定めがある場合を除き」とした方が適切です。

10 法人契約なら、中途解約を認めなくてよいのか

法人契約では、消費者向け契約よりも、当事者間で合意した契約条件が重視されます。そのため、1年間の固定契約を締結し、契約期間中のお客様都合による中途解約を認めない条件を設けることは可能です。ただし、法人契約であるだけで、自動的に中途解約を禁止できるわけではありません。

重要なのは、契約前に次の内容を明確にし、双方が合意していることです。

記載例

本契約は1年間の固定期間契約です。契約期間中のお客様都合による中途解約は、原則としてお受けしていません。契約期間の途中で利用を停止した場合も、契約期間中の利用料金のお支払いが必要です。ただし、当社の重大な契約違反その他法令または本契約により解除が認められる場合は、この限りではありません。

「法人だから、いかなる理由があっても解約できない」と書くのではなく、固定期間契約であることを根拠にします。

10-a 中途解約と利用停止は、別のこと

年間契約では、次の三つを分けて考える必要があります。利用をやめたからといって、契約や支払義務が自動的に終了するとは限りません。

内容意味
利用停止サービスを使わなくなること
中途解約契約期間の途中で契約を終了すること
更新停止現在の契約期間満了後に更新しないこと
年間契約での記載例

契約期間中に利用を停止しても、契約は契約期間満了日まで継続します。次回の契約更新を希望しない場合は、契約期間満了日の30日前までに、管理画面から更新停止の手続を行ってください。

10-b 自動更新の停止期限を明記する

年間契約では、中途解約だけでなく、自動更新の条件もトラブルになりやすい部分です。「更新しない場合は事前に連絡してください」だけでは、具体的な期限が分かりません。次の内容を明確にします。

記載例

契約期間満了日の30日前までに更新停止の申出がない場合は、同一条件で1年間更新します。

11 利用規約に書くだけでは足りない

BtoB契約でも、「利用規約に年間契約と書いてあり、同意欄にもチェックしてもらっている」という説明を受けることがあります。利用規約への同意は重要です。しかし、年間契約・中途解約不可・自動更新・違約金など、契約判断を大きく左右する条件を、読みにくい利用規約の中にだけ置くべきではありません。

少なくとも、次の内容は料金ページや申込画面でも確認できるようにします。

申込ボタンの近くに表示する例

このプランは1年間の契約です。年額396,000円(税込)を、月額33,000円(税込)ずつ12回に分けてお支払いいただきます。契約期間中のお客様都合による中途解約は、原則としてお受けしていません。

利用規約は、重要な条件を隠す場所ではありません。

11-a 申込確認画面を設ける

純粋なBtoB取引でも、オンライン申込みには確認画面を設けた方がよいでしょう。確認画面では、次の内容を一覧で表示します。

申込ボタンは「次へ」ではなく、「契約条件に同意して申し込む」など、契約の申込みになることが分かる表示にします。

11-b 申込担当者の契約権限も確認する

BtoBサイトでは、申込担当者に会社を代表して契約する権限があるか、という問題があります。会社名とメールアドレスを入力できれば誰でも契約できる設計では、後から「申込者に契約権限がなかった」「会社として契約を承認していない」という問題が生じる可能性があります。

契約金額や期間に応じて、次の確認を検討します。高額な初期費用や複数年契約がある場合は、Webフォームへの入力だけで契約を完結させてよいかを検討する必要があります。

12 BtoBでも、何を書いても有効になるわけではない

BtoB契約では、一般消費者向けの法律が適用されない場合があります。しかし、それは次のような意味ではありません。

こう考えるのは誤り

利用規約に何を書いてもよい/一切解約させなくてもよい/サービスを提供しなくても返金しなくてよい/事業者側だけが自由に契約を変更できる。

事業者間契約にも、民法上の契約ルール・錯誤・詐欺・債務不履行・公序良俗などの一般的な規律が関係します。また、営業担当者の説明と利用規約が異なる、見積書と申込画面で契約期間が違う、料金ページでは月額契約に見えるのに規約では年間契約になっている——といった状態はトラブルの原因になります。BtoBだから説明を減らせるのではなく、BtoBだからこそ、契約条件を明確にする必要があります。

この記事の、いちばん奥
BtoBの特商法表記は、法人向けだから省けるページではない。

純粋な事業者間取引では、特定商取引法が適用されない場合があります。しかし、オンラインでカード決済やコンビニ決済を導入するなら、加盟店審査を受けなければなりません。審査では、運営事業者・サービス内容・料金・支払方法・提供時期・契約期間・解約や返金条件・問い合わせ先などを確認されます。そのため、実務上「BtoBだから特商法表記を掛けない」という選択は取りにくくなります。誰と契約し、いくら支払い、いつ始まり、どうやめられるのかを正直に示すことは、審査を通すテクニックである前に、取引先との信頼を設計する行為そのものです。会員を管理する時代は終わりました。これからは、人との関係を設計する時代です。

BtoBサイトの表記・規約・決済審査の備え方から、ご相談ください

年間契約・初期費用ありBtoBサービスの設計、特商法表記や利用規約、申込フロー・確認画面、カード・コンビニ決済の審査対応まで。「うちの料金体系だと、どう書けばいいか」——そんな段階から、専門スタッフが無料でご相談に応じます。

岸本 健志
会員ビジネスLab 主任研究員 / ハートランドITイノベーション代表

1997年よりインターネット業界に従事。2007年の創業以来、EC、メディア、SaaS、コミュニティサイトなど数多くの会員ビジネスの立ち上げと成長を支援。決済導入・審査対応、規約や申込フローの整備も数多く手がけてきました。

「会員を管理する」から「人との関係を設計する」へ。会員ビジネスの未来に、これからも愚直に向き合い続けていきます。

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