誰がサービスを提供するのか。いくら支払うのか。いつサービスが始まり、契約はいつまで続くのか。解約するには、いつまでに何をすればよいのか。——特定商取引法に基づく表記は、これらを利用者に伝えるためのページです。

単なる会社案内ではありません。特に月額サービスや年間契約では、利用者が申込み前に契約内容を理解できるようにする必要があります。まずは、架空の月額会員サービス「まなびプラス」を例に、基本的な記載方法から見ていきましょう。

01 特商法表記には、何を書くのか

インターネットを通じた通信販売では、主に次の事項を表示します。消費者庁の特定商取引法ガイドでも、これらが通信販売広告の表示事項として示されています。

大切なのは、項目を埋めることだけではありません

料金ページ、利用規約、申込画面、最終確認画面、申込完了メールに書かれている内容が、すべて一致している必要があります。どこか一か所だけ古い金額・古い条件が残っていると、利用者の誤認やトラブルの原因になります。

「広告」とは、Google広告のことではありません。特定商取引法では「通信販売の広告」に必要事項を表示すると説明されますが、この「広告」には、Google広告・Yahoo!広告などの有料広告だけでなく、インターネット上の商品ページやサービス紹介ページも含まれます。

有料広告を使っていなくても、自社サイトで商品や有料サービスを案内し、インターネットから申込みを受け付けていれば、通信販売の広告に関するルールを確認する必要があります。

02 記載例 — 架空の月額サービス「まなびプラス」

以下は、架空のオンライン会員サービスを想定した記載例です。あくまで例で、実際には提供する商品・料金体系・決済日・契約期間・解約処理に合わせて書き換える必要があります。

項目記載例
販売事業者株式会社まなびプラス
運営責任者山田 太郎
所在地〒100-0001 東京都千代田区千代田1番1号 まなびビル5階
電話番号03-1234-5678
メールアドレスsupport@example.jp
販売価格月額3,300円(税込)
販売価格以外に必要な料金本サービスの利用に必要なインターネット接続料金および通信料金は、利用者の負担となります。
支払方法クレジットカード決済
支払時期申込時に初回利用料金を決済します。翌月以降は、初回決済日と同じ日に毎月自動決済します。同じ日が存在しない月は、その月の末日に決済します。
サービスの提供時期決済完了後、直ちにサービスをご利用いただけます。
契約期間契約期間は1か月です。解約手続が完了するまで、1か月ごとに自動更新されます。
解約方法マイページの「契約管理」から解約できます。
解約期限次回決済日の前日までに解約手続を完了した場合、次回以降の請求は行いません。
返品・キャンセルデジタルサービスの性質上、サービス提供開始後のお客様都合によるキャンセルはお受けしていません。
中途解約・返金契約期間の途中で解約した場合でも、支払済みの利用料金の日割り返金は行いません。解約後も、支払済みの契約期間が終了するまでサービスをご利用いただけます。
動作環境サービスの利用に必要な動作環境は、当社サイトの「推奨環境」をご確認ください。

※ この例は月額・1か月更新のサブスクを想定したものです。年間契約・都度課金・物販などでは、支払時期・契約期間・返品の欄が大きく変わります。

03 事業者名・運営責任者・電話番号

「誰と契約するのか」を利用者が分かるように書きます。ブランド名やサービス名だけでは足りません。

販売事業者は、登記されている正式な法人名で。「まなびプラス」がサービス名でも、運営会社が株式会社まなびプラスであれば、販売事業者欄には正式な法人名を記載します。法人がインターネット上で通信販売の広告を行う場合は、代表者または通信販売業務の責任者の氏名も表示事項になります。

基本形ではない書き方

運営責任者:カスタマーサポート部
運営責任者:販売管理担当

部署名や役職だけを書くのは基本形ではありません。代表者名を掲載したくない場合は、実際に通信販売業務を管理する責任者を定め、その人の氏名を記載する方法があります。ただし、形式的に名前を借りるのではなく、実際に責任を負う担当者であることが前提です。

03-a 「電話番号を書きたくない」場合

「営業電話が増えるので載せたくない」「問い合わせはフォームだけにしたい」——よくあるご相談です。しかし通信販売では、事業者の電話番号も表示事項に含まれます。メールやフォームがあるだけで、通常の記載方法において電話番号を省略できるわけではありません。

負担を抑えつつ載せる書き方

電話番号:03-1234-5678
受付時間:平日10時から17時まで
サービスに関するお問い合わせは、記録保持のため、原則としてお問い合わせフォームからお願いいたします。

掲載する番号は、利用者からの連絡に対応できる番号にします。つながらない番号や、利用者対応を一切行わない番号を形式的に掲載する方法は避けるべきです。

03-b 責任者名や電話番号を省略できる場合

特定商取引法には、一定の条件を満たした場合に、広告上の一部の表示を省略できる仕組みがあります。消費者から請求があった場合に、必要事項を記載した書面または電子メールを遅滞なく提供することを広告上に表示し、実際に提供できる体制を整えている場合です。

案内文の例

販売事業者の名称、所在地、電話番号および運営責任者の氏名については、請求があった場合、遅滞なく電子メールにより提供します。開示をご希望の方は、お問い合わせフォームからご請求ください。

この一文を載せるだけでは足りません

請求を受け付ける窓口を用意し、利用者が申込みを判断する前に確認できるよう、実際に情報を提供する体制が必要です。また、すべての表示事項を省略できるわけではありません。継続契約の販売条件・提供条件、返品特約、ソフトウェアの動作環境、申込期間などは、条件によって省略できません。

法律上省略できることと、実務上省略した方がよいことは別です。継続課金・高額商品・年間契約・提供まで時間がかかるサービスでは、事業者情報が見えないことが、利用者の不安やカード審査上の追加確認につながる場合があります。

04 料金は、利用者が実際に負担する金額を書く

販売価格は税込価格で分かるように記載します。初期費用や事務手数料があるときは、月額料金と分けて書きます。

シンプルな月額

月額3,300円(税込)

初期費用がある場合

初期登録料:11,000円(税込)
月額利用料:3,300円(税込)

送料・振込手数料・代引手数料・システム利用料など、販売価格以外に負担する金額がある場合も記載します。複数プランがあるときは「各商品・プランの販売価格は、料金ページに税込価格で表示しています」と案内する方法もありますが、その場合は料金ページを変えたときに、利用規約や最終確認画面の料金が古いまま残らないよう管理する必要があります。

05 継続課金では、月額料金だけでは足りない

「月額3,300円(税込)」とだけ書いても、契約条件は分かりません。同じ3,300円でも、毎月自由に解約できる契約と、1年分を12回に分けて支払う契約では、まったく内容が異なります。利用者が確認したいのは、次の点です。

1か月単位で更新する場合

利用料金は月額3,300円(税込)です。申込時に初回利用料金を決済し、翌月以降は初回決済日と同じ日に自動決済します。

契約期間は1か月です。解約手続が完了するまで、1か月ごとに自動更新されます。

次回決済日の前日までにマイページから解約手続を完了した場合、次回以降の課金は行いません。月の途中で解約した場合でも、支払済みの利用料金の日割り返金は行いません。

初月無料の場合

申込日から30日間は無料です。無料期間終了日の翌日から、月額3,300円(税込)の有料契約へ自動的に移行します。無料期間中にマイページから解約した場合、料金は発生しません。

無料や初回割引を強調する場合は、通常料金・課金開始日・自動更新・解約方法を近くに表示します。初回料金だけを大きく表示し、その後の条件を利用規約の中だけに置く方法は避けるべきです。

06 年間契約で「中途解約に応じない」と書いてよいか

年間契約を設け、契約期間中のお客様都合による中途解約を認めない契約設計が、直ちに禁止されるわけではありません。ただし、年間契約であることを申込み前に明確に伝える必要があります。

1年分を毎月請求する場合の表示

契約期間は、利用開始日から1年間です。
利用料金は年額39,600円(税込)で、月額3,300円(税込)を12回に分けてお支払いいただきます。

「月額3,300円」とだけ表示すると、毎月解約できるサービスだと受け取られる可能性があります。月払いであっても、契約そのものが1年間なら、年間契約であることと支払総額を示します。

中途解約に関する記載例

本契約は1年間の固定期間契約です。契約期間中のお客様都合による中途解約は、原則としてお受けしていません。契約期間の途中で利用を停止した場合でも、契約に基づく利用料金のお支払いが必要です。ただし、法令により契約の解除または取消しが認められる場合は、この限りではありません。

「一切解約できない」「残額を全額請求」と書けば済む、ではない

「いかなる理由があっても一切解約できません」という書き方は避けた方がよいでしょう。事業者がサービスを提供しない場合や、法令上の解除・取消しが認められる場合まで否定できるとは限らないためです。

中途解約時に残期間分を請求する場合も、その金額が分割払いの残額なのか/違約金なのか/将来提供しない代金なのかを整理する必要があります。消費者契約では、解除に伴う違約金や損害賠償額について、事業者に生じる「平均的な損害」を超える部分が無効となる場合があります。規約に「残額を全額支払う」と書くだけで、当然に全額請求できるわけではありません。

07 重要な条件を、細かい文字の規約の中だけに書かない

「利用規約に書き、申込時に同意チェックを付ければよいか」という質問があります。同意は大切ですが、重要な契約条件を、読みにくい規約の中にだけ書いておけばよいとはいえません。

ありがちなNG

料金ページには「月額3,300円」とだけ表示し、長い利用規約の途中に小さな文字で「契約期間は1年間とし、期間中の中途解約は認めません」と書く。

これでは、利用者が毎月解約できるサービスだと思って申し込む可能性があります。次のような重要事項は、利用規約だけでなく料金ページや最終確認画面にも表示します。

文字サイズを一律に「何ポイント以上」と定めれば済む問題ではありません。しかし、スマートフォンで読めないほど小さい、背景と区別がつかない、重要事項が大量の文章に埋もれている——そのような表示は避けるべきです。問題は、規約を用意したかではなく、利用者が契約前に重要な条件を認識できたかです。

07-a 最終確認画面にも、契約条件を表示する

特商法表記や利用規約が正しくても、それだけでは終わりません。インターネット通販では、申込みを確定する直前の最終確認画面で、契約内容を一覧性をもって確認できるようにする必要があります。

継続課金では、2回目以降の料金・各回の請求時期・契約期間・解約条件も明確にします。「詳細は利用規約をご確認ください」というリンクだけで済ませず、今回の申込みに直接関係する条件を画面上で確認できるようにします。

08 インターネット契約なら、クーリング・オフは関係ないのか

一般的な通信販売には、訪問販売や電話勧誘販売のようなクーリング・オフ制度は原則としてありません。したがって「契約後8日以内なら無条件で解約できる」とは限りません。ただし、「Webから申し込んだ契約はすべてクーリング・オフと無関係」と考えるのも誤りです。

判断するときは、最終的な申込方法だけでなく、契約内容や申込みまでの勧誘方法も確認します。例えば、電話で勧誘した後にWebフォームから申し込ませた場合、単純な通信販売とは異なる扱いになる可能性があります。

「特定継続的役務」に該当する場合

一定の期間と金額を超える次のサービスは、特定商取引法上の「特定継続的役務提供」に該当する場合があります。エステティック/美容医療/語学教室/家庭教師/学習塾/パソコン教室/結婚相手紹介サービス。

これらに該当すると、所定のクーリング・オフや中途解約のルールが適用されます。オンラインで契約した・オンラインで提供するという理由だけで、当然に対象外になるわけではありません。

通信販売の返品制度は、クーリング・オフとは別の制度です。商品の通信販売では、返品特約を適切に表示していない場合、商品を受け取った日から8日以内であれば、購入者が送料を負担して返品できる場合があります。事業者が返品条件を適切に表示していれば、その返品特約が適用されます。また、クーリング・オフがないことは、虚偽説明があった場合の取消し、債務不履行による解除、不良品への対応まで否定するものではありません。

09 個人事業主や法人なら、消費者向けのルールは関係ないのか

契約者には、一般の個人だけでなく、個人事業主や法人もいます。注意したいのは、個人事業主だから必ず事業者になるわけではないという点です。特定商取引法では「営業のため、または営業として締結するもの」は適用除外となる場合があります。判断するときは、契約名義だけでなく何のために契約するのかを見ます。

契約者利用目的基本的な考え方
一般の個人私生活のため消費者向け契約になり得る
会社員などの個人副業や事業のため事業者向け契約になり得る
個人事業主私生活のため消費者向け契約になり得る
個人事業主店舗や業務のため事業者向け契約になり得る
法人会社の業務のため原則として事業者向け契約

例えば、個人事業主が自宅で個人的に利用する動画サービスを申し込む場合は、消費者として契約している可能性があります。同じ人が、店舗の予約システムや会計ソフトを申し込む場合は、通常、事業のための契約です。

「個人事業主として申し込む」にチェックさせれば足りるわけではない

チェック欄を置くだけで、すべての契約が事業者間契約になるとは限りません。実際の商品・サービス、利用目的、申込者の事業との関係などから判断されます。一般の個人も同じページから申し込めるなら、消費者向け取引が含まれます。その場合は、個人向けの表示や最終確認画面を前提に設計した方が安全です。

法人向けなら何を書いてもよい、わけでもありません。法人契約にも、民法・債務不履行・錯誤・詐欺・公序良俗などの一般的な契約ルールが関係します。法人向けサービスでも、契約主体・サービス内容・料金・支払時期・契約期間・自動更新・中途解約・返金条件・問い合わせ先は明確にします。

10 表記が不足すると、すぐ罰金になるのか

特商法表記が一つ不足したからといって、確認された瞬間に自動的に罰金が科される仕組みではありません。しかし、表示義務に違反しても問題がない、という意味でもありません。

正確には、こう考えます

記載漏れがあれば、直ちに罰金になるとは限らない。
しかし、行政処分(業務改善の指示・業務停止命令・役員等への業務禁止命令)の対象となり、違反の内容によっては罰則の対象にもなる。

実際と異なる会社情報を書く、存在しない電話番号を掲載する、通常料金を隠す、解約条件を実際より有利に表示する——そのような行為は、単なる記載漏れより問題が大きくなります。最終確認画面で必要事項を表示しなかったり、誤認させる表示をした結果、利用者が誤認して申し込んだ場合には、申込みを取り消される可能性もあります。

10-a クレジットカード審査との関係

特商法表記を整えれば、必ずクレジットカード加盟店審査に通るわけではありません。法令上の表示義務と、カード会社・決済代行会社の審査基準は別です。特に継続課金では、次のような表示が追加確認や修正につながりやすくなります。

法律上は事業者情報を省略できる場合でも、決済会社が審査上の必要性から、電話番号・責任者名・所在地などの掲載や提出を求めることがあります。特商法表記の有無だけでなく、サイト全体から取引の内容を説明できる状態にしておくことが重要です。より詳しくはクレジットカード加盟店審査の要点、サブスク・継続課金の要点もあわせてご覧ください。法人・個人事業主向けのBtoBサイトについてはBtoBサイトの特商法表記で整理しています。

11 特商法表記を作ると、決まっていない契約条件が見えてくる

特商法表記を作ろうとすると、次のような「まだ決まっていないこと」が見つかることがあります。文章が書けない原因は、書き方ではなく、契約条件そのものが決まっていないことがあります。

まず、料金・契約期間・課金日・更新・中途解約・返金について決めます。そのうえで、その内容を次のすべてに同じ条件で反映します。

この記事の、いちばん奥
特商法表記は、カード審査の直前に形式的に用意するページではない。

それは、事業者自身が契約内容を整理し、利用者に分かる形で説明するためのページです。誰と契約し、いくら支払い、いつ始まり、どうやめられるのか——それを正直に示すことは、審査を通すためのテクニックである前に、会員との信頼を設計する行為そのものです。会員を管理する時代は終わりました。これからは、人との関係を設計する時代です。

表記・規約・申込フローの整え方から、ご相談ください

継続課金・年間契約の設計、特商法表記や利用規約、申込フロー・最終確認画面の整え方まで。「うちの料金体系だと、どう書けばいいか」——そんな段階から、専門スタッフが無料でご相談に応じます。

岸本 健志
会員ビジネスLab 主任研究員 / ハートランドITイノベーション代表

1997年よりインターネット業界に従事。2007年の創業以来、EC、メディア、SaaS、コミュニティサイトなど数多くの会員ビジネスの立ち上げと成長を支援。決済導入・審査対応、規約や申込フローの整備も数多く手がけてきました。

「会員を管理する」から「人との関係を設計する」へ。会員ビジネスの未来に、これからも愚直に向き合い続けていきます。

← 会員ビジネスWiki 受付へ戻る