私たちは最初、LINEログインを入れようとしていました。会員管理システムを開発するなら、LINEログインは必須だろうと思っていたのです。利用者は新しいパスワードを覚える必要がなく、会員登録のハードルも下がります。実際、多くのWebサービスでLINEログインは採用されています。

PayAI NEXTの設計当初も、「会員管理システムならLINEログインを導入するべきだろう」と考えていました。しかし、協会や団体、サブスクリプションサービスの運営を実際に見ていく中で、その考え方は変わっていきました。なぜなら、会員管理システムで本当に重要なのは「ログイン」ではなかったからです。

LINEログインで会員管理は完結しない

LINEログインは便利です。しかし会員管理システムでは、LINEアカウントだけでは必要な情報が揃いません。例えば、次のような情報は別途入力してもらう必要があります。

そのため実際には、「LINEログイン」➡「追加情報入力」➡「会員登録」という流れになります。つまり、ログインは簡単になっても、会員登録そのものがなくなるわけではありません。私たちは設計を進める中で、「本当に優先すべきなのはログインの簡略化なのだろうか」と考えるようになりました。

ログインを増やしたいなら、まず通知が必要だった

私たちは当初、会員サイトへのログイン回数を増やしたいと考えていました。しかし運営の現場を見ると、多くの会員はサイトの存在を忘れているわけではありません。ただ、「行く理由がない」だけなのです。

例えば、新しいコンテンツが公開された、イベント募集が始まった、会費更新時期が近づいた、会員限定情報が追加された——そんなタイミングで案内が届けば、多くの会員はサイトへアクセスします。つまり、会員サイトの活性化に必要なのはログイン機能の改善だけではなく、適切な通知導線だったのです。

私たちは Account Link(アカウント連携:自社の会員データとLINE公式アカウントの友だちを紐付ける仕組み) を、そのための重要な仕組みだと考えています。

見込み客は、すでにLINEにいる

さらに検討を進める中で、私たちはあることに気付きました。多くの団体では、会員になる前から見込み客との接点がLINE上にあります。セミナー参加、資料請求、無料登録、問い合わせ、イベント申込——そうした接点です。

実際の流れは、次のようなケースが少なくありません。

つまり、私たちが考えるべきだったのは「会員登録時にLINEを使う方法」ではなく、「見込み客から会員になるまでの導線全体」だったのです。

一番困るのは「登録したつもり」の会員だった

会員登録のタイミングでLINEログインを導入すると、思わぬ問題が発生します。利用者は「LINEでつながっているから登録できた」と思っています。しかし実際には、「LINEログインだけ完了し、会員登録フォームや決済が未完了」という状態になることがあります。

運営を悩ませる「登録のすれ違い」と離脱
  • 「登録できた」と勘違いして画面を閉じてしまう
  • 会員登録したつもりで、実はLINEログインしかしていない
  • 画面の行き来が面倒になり、途中で離脱した
スマホを見て「登録できた!」と笑うユーザーと、「LINEにはいるのに会員データがない…この人は会員?見込み客?」とパソコン前で頭を抱える運営スタッフのすれ違いを示した図。ユーザーの視点と運営・事務局の視点を対比している。
図解①:「本人は会員のつもり」のすれ違いが、運営のサポートコストを爆増させる。ユーザーの視点と運営の視点の断絶。

こうしたケースは、運営側から見ると非常に把握しづらい問題です。「この人は会員なのか?」「まだ見込み客なのか?」という確認作業が必要になり、結果としてサポート対応や事務局作業が増えてしまいます。私たちは、認証の便利さよりも、運営上の摩擦を減らすことを優先したいと考えました。

LINEログインとAccount Linkの違い

ここで重要になるのがAccount Linkです。LINEログインは「本人確認とログインの仕組み」であり、Account Linkは「会員情報とLINE公式アカウントの友だちを紐付ける仕組み」です。この違いは非常に大きいと考えています。

Account Link
主な目的 本人確認とログインの簡略化 会員情報とLINE友だちの紐付け
最大のメリット 会員が楽になる 運営(事務局)が楽になる
性質 入る瞬間だけを楽にする「点」 入った後もつながり続ける「線」

私たちは後者(運営が楽になること)を重視しました。

LINEログイン vs Account Link の本質を示した図。LINEログインは『入る瞬間(ドア)』だけを楽にする点、Account Linkは会員管理システムとLINE公式アカウントの間で通知や案内が双方向に行き来し、入った後もつながり続ける線として対比している。
図解②:「入る瞬間(点)」だけのLINEログインと、「ずっとつながり続ける(線)」Account Linkの対比。

Account Linkで実現できること

Account Linkによって会員とLINE公式アカウントを紐付けることで、以下の通知が自動化できます。

ログインのためのLINE活用ではなく、会員との継続的なコミュニケーションのためのLINE活用。私たちはこちらの方が、会員管理システムにとって本質的な価値だと考えました。

それでもLINEログインが向いているケース

もちろんLINEログインを否定しているわけではありません。次のようなケースでは、LINEログインは非常に大きな価値を発揮します。

LINEがサービスの中心にある

LINE公式アカウントがサービスの中心で、LINE上でコンテンツ提供を行うオンラインサロンやファンクラブ。

LINE完結型のコミュニティ

会員活動そのものがLINE上で行われる、LINE完結型のコミュニティ。

サービスの設計思想によって、最適な選択は変わります。大切なのは「流行っているから入れる」ではなく、自分たちの会員活動がどこで行われているかを見極めることです。

PayAI NEXTが選んだ結論

私たちは最終的に、次の構成を選びました。

会員管理システムで本当に重要なのは、「どうログインするか」ではなく、「どう会員とつながり続けるか」だからです。会員管理システムの目的が「会員登録」ではなく「会員との継続的な関係づくり」であるなら、最初に考えるべきはログイン方法ではなくコミュニケーション設計です。

その結果として、PayAI NEXTではAccount Linkを重視する設計を選択しました。

よくある質問(FAQ)

QLINEログインとAccount Linkは併用できないのですか?
A

技術的には併用可能です。ただし、両方を導入すると「ログイン用の連携」と「通知用の連携」の2つのステップが発生し、ユーザー側が混乱したり、運営側の管理ステータスがさらに複雑化したりするリスクがあります。そのため、PayAI NEXTでは運用フローをシンプルに保つために、目的を絞った設計(Account Linkの重視)を推奨しています。

QAccount Linkを導入する場合、会員は毎回パスワードを入力してログインするのですか?
A

いいえ、最初の1回だけです。Account Link(アカウント連携)が一度完了すれば、LINE公式アカウントのメニュー(リッチメニュー)をタップするだけで、ID・パスワードを入力することなく会員マイページへ自動ログインできる仕組みを構築できます。そのため、ログインの利便性も損なわれません。

QすでにLINEログインを導入してしまっているのですが、Account Linkへの切り替えは可能ですか?
A

はい、可能です。現在の会員データとLINE友だちの状況を整理した上で、スムーズに移行するプランをご提案いたします。移行期の会員様への案内方法なども含めてサポートいたしますので、お気軽にご相談ください。

こんな課題はありませんか?

一つでも当てはまる場合は、現在の会員導線を見直す余地があるかもしれません。

団体の運営スタイルに合わせた最適なLINE活用をご提案します

「自団体の会員管理にはどちらの仕組みが合っているのだろう?」と迷われた方は、ぜひお気軽にご相談ください。PayAI NEXTでは、現在の運営フローをヒアリングし、実際の運用を想定した最適なシミュレーションをご提案しています。

岸本 健志
会員ビジネスLab 主任研究員 / ハートランドITイノベーション代表

1997年よりインターネット業界に従事。2007年の創業以来、EC、メディア、SaaS、コミュニティサイトなど数多くの会員ビジネスの立ち上げと成長を支援。

30年近く会員システムの設計・運用に携わる中で、システムは「会員を管理するもの」から「人と人との関係(Relationship)を育てるもの」へ転換すべきだと確信。現在は、AI時代における次世代のシステム設計思想として「Relationship OS」を提唱しています。

また、自身も宿泊施設の運営で現場に立ち続け、『起きている時間はすべて仕事であり、システムへの探求』という圧倒的な熱量で、会員ビジネスの未来に向き合っています。

「人との関係は設計できるのか」という問いに、これからも人生をかけて愚直に向き合い続けていきます。

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