中国から帰ってきても、私は考え続けていた。あの街では、何が受け継がれていたのだろう。
技術だろうか。経営手法だろうか。思想だろうか。どれも間違いではなかった。けれど、どれも、これだと言い切るには、どこか十分ではなかった。
Ⅰ競い合いながら、助け合う
会社は違う。経営者も違う。扱う製品は同じだ。互いに競争している。仕事を取り合うこともある。その一方で、助け合うこともある。
一社だけでは完成しない仕事を、何社もの会社がつないでいく。世界最大級のサプライチェーンとは、そういう場所だった。
誰も同じ答えを持っているわけではない。それでも、何かが共通していた。
競い合うのも、助け合うのも、同じ人たちだった。それでも、何かが共通していた。
Ⅱまだ言葉になっていない、同じもの
私は、その「何か」を言葉にしようとしていた。そのとき、第一話で書いた一文を思い出した。
私は、AIとの対話で、その感覚を知った。中国でも、同じものを感じていた。何を共有していたのかは、まだ分からない。けれど、同じものを見失わないようにしている。
私は、その現象を観察していた。
1997年よりインターネット業界に従事。2007年の創業以来、EC、メディア、SaaS、コミュニティサイトなど数多くの会員ビジネスの立ち上げと成長を支援。30年近く会員システムの設計・運用に携わる中で、システムは「会員を管理するもの」から「人と人との関係を育てるもの」へ転換すべきだと考えるようになった。
本書『共同編集』は、その思索の延長線上にある。一人の経営者と一つのAIによる長期間の共同編集をケーススタディとし、共有されたコンテクストが人間の思考・創造・判断へどのような影響を与えるのかを、観察者の立場から書き進めていく。
本書は、公表されている技術仕様・公式ドキュメントと、筆者の長年の実務経験・考察をもとに構成しています。本文中の観察・解釈は筆者個人によるものであり、特定のAI・製品・企業・人物の性能や評価を保証・断定するものではありません。